はじめに
貿易、購買、財務などの現場では、Excelの表の翻訳はWordに劣りません。海外のサプライヤーに見せる購買明細、顧客に見せる見積書、本社へ報告する在庫表。ほとんどすべてに中英の対訳が要ります。
ただし表の翻訳の落とし穴は、文書より深いです:数式、金額、書式は一つも動かしてはいけません。翻訳ソフトへ手でコピーして貼り戻すと、数式の参照がずれます。Excel標準の翻訳はセルを一つずつ選ぶしかなく、終わったあと列幅も直し直します。
この記事で実演するExcelアドイン、TopCopilot AIは、シート全体をひとまとまりとして扱います。書き戻しは2種類です:
- 直訳モード(Translation):訳文が原文を置き換え、シート全体が英語だけになります
- 対訳モード(Bilingual):原文は残り、訳文は同じセルの下に書かれ、中英が行ごとに対照できます
この記事で見るのは対訳モード——ExcelでWhole sheetを一度、Startを一度押すと、シート全体(今回の実例は57セル)が一度に訳せます。数字、金額、数式はそのままで、右側ではセルごとに訳文を照合できます。
アドインは主要な 14 以上の言語の相互翻訳に対応しています。以下は、簡体字中国語を英語に翻訳する例です。
1. どんな表に、シート全体の翻訳が必要か
動画で使っているのは、実際の中国語の表、『2026年度購買明細』です。シート名は「注文明細」です。この種の表は典型的です:
- 項目が多い:第1分類、第2分類、製品、数量、単価、金額、状態、担当者、備考
- 中英が混在:製品名に iPhone 15、MacBook Air、USB-C 充電器があり、翻訳で型番を壊してはいけません
- 数式がある:小計と合計は数式で出るので、翻訳は数字と数式に触れてはいけません
- 対訳が必要:中外の双方が数量、金額、状態を照合しやすくなります
この種の表を手で処理すると、57セルの翻訳に書式調整が加わり、30分から始まります。汎用の翻訳ツールではまとめて貼るしかないことが多く、戻すと数式と列幅がすべて乱れます。
2. 操作:表を開いてから翻訳完了まで
手順 1:表を開き、AI Assistant を起動する
Excelファイルを開くと、上部のメニューバーに "AI Assistant" タブがあります。開くと、リボンのいちばん左が "Whole sheet"(シート全体)で、横には Selection(選択範囲)、Quick translate(クイック翻訳)などの入口もあります。
今回の実例では、いちばん左のこのボタンだけを使います。シート全体を一度で終えます。
手順 2:翻訳の設定
クリックして "Whole sheet" のあと、右側に AI Assistant パネルが開きます:
- Target language: English(翻訳先言語:英語)
- Advanced(詳細設定)を展開すると、領域が三つあります:
SCOPE(翻訳範囲)
- This sheet:現在のシートだけを翻訳します
- All sheets:ブック内のすべてのシートを翻訳します
WRITE-BACK(書き戻し)
- Translation:直訳。訳文が原文を置き換えます
- Bilingual:対訳。原文は残り、訳文は下に書かれます
TRANSLATION STYLE(訳文のスタイル)
- Translation font:訳文のフォント(既定は Automatic、原文に合わせる)
- Translation size:訳文のサイズ(既定は Default、原文に合わせる)
- Translation bold:訳文の太さ(既定は Match the source)
- Translation color:訳文の色(既定色 / カスタム色)
今回の実例では This sheet + Bilingualにし、ほかは「原文に合わせる」のままです。
手順 3:Start を押し、シート全体の翻訳を始める
を選び "Start" 後、パネルには次のように表示されます:
57 cells. Starting...
Scanning the document...
Don't edit the document during translation, or write-back may miss.
重要:翻訳中は表を編集しないでください。書き戻し位置がずれることがあります。
字幕からも処理の順番が分かります:先にシート全体をスキャンして用語を作り、その後にセルごとに訳して書き戻す。これは表で特に重要です。先に用語を揃えないと、同じ「事務用品」が A 列では Office Supplies、別の場所では Office Products になります。
手順 4:進捗と対訳の書き戻し
翻訳が始まると、パネルには 20 / 57 cells (35%)。表にはすでに対訳が見えます。中国語と英語が同じセルに入る:
- 電子製品 → Electronics
- 携帯電話 → Mobile
- パソコン → Computers
- アクセサリ → Accessories
- 未処理 → Pending
- 進行中 → In Progress
- 完了 → Completed
- 張偉 → Zhang Wei
- 至急 → Urgent
- 在庫十分 → In stock
セルの中は中国語が上、英語が下です。訳文を書き戻すとき、アドインは該当行の行の高さを調整します。原文と訳文の2行が欠けずに表示され、行の高さを手で伸ばす必要はありません。翻訳中に一行が高く見えるのは、このためです。
進行が 40 / 57 cells (70%) になると、事務用品の区域も終わります:
- 事務用品 → Office Supplies
- 用紙 → Paper
- 文具 → Stationery
- 消耗品 → Consumables
- サインペン → Signature Pen
- A4 コピー用紙 → A4 Copy Paper(規格の書き方を残す)
- プリンターのインクカートリッジ → Printer ink cartridge
右下の Pause でいつでも翻訳を一時停止でき、Cancel で今回の作業を取り消せます。
手順 5:翻訳完了
パネルの表示:
Sheet translated — 57 paragraph shown, 11.5s
Done
57セル、購買明細のシート全体が、11.5秒で翻訳がすべて終わりました。
このとき見出しの9項目も中英対照になります:第1分類 / Primary Category、第2分類 / Secondary Category、製品 / Product、数量 / Quantity、単価 / Unit Price、金額 / Amount、状態 / Status、担当者 / Person in Charge、備考 / Remarks。
食品の区域も終わります:食品 → Food、飲料 → Beverages、菓子 → Snacks、ポテトチップス → Potato chips、ミネラルウォーター 500ml → Mineral water 500ml、周傑 → Zhou Jie。小計と合計は Subtotal / Total。
手順 6:数字、金額、数式は動いていない
ここは表の翻訳で最も壊れやすいところであり、今回の実例で重点的に確認した部分です。
合計セル F14 を選ぶと、数式バーは今も次のままです:
=SUBTOTAL(9,F3:F13) 翻訳の前後:
- 数量:2、1、5、20、50、4、30、12……そのまま残ります
- 単価:5,999.00、8,999.00、99.00、25.00……そのまま残ります
- 金額:11,998.00、8,999.00、21,492.00、23,018.00……そのまま残ります
- 合計:小計 8 / 21,492.00、74 / 1,370.00、42 / 156.00、合計 124 / 23,018.00。すべて数式が計算を続けます
つまりアドインが訳すのはテキストだけで、再計算せず、数値と数式も書き換えません。固有名詞も元の書き方を残します:iPhone 15、MacBook Air、USB-C Charger(USB-C 充電器)、A4 Copy Paper(A4 コピー用紙)。
手順 7:右側でセルごとに照合
翻訳が終わると、右のパネルは「セルごとの一覧」になります。各項目は Src(原文) と Tr(訳文)で、チェックマークが付きます:
- Src ポテトチップス → Tr Potato chips
- Src 進行中 → Tr In Progress
- Src 周傑 → Tr Zhou Jie
- Src 食品 小計 → Tr Food subtotal
- Src 合計 → Tr Total
重要な項目(人名、状態、備考)はここで一気に目を通せます。表の中を往復するよりずっと速いです。パネルの下には Start over(やり直す)と Cancel。
手順 8:3つの表示をワンクリックで切り替え
翻訳が終わると、パネル上部に表示の切り替えが3つ出ます:
- Translation:訳文だけを表示
- Bilingual:中英対照
- Original:原文だけを表示
右側には Apply to: This sheet の適用範囲のドロップダウンがあります。
を選び Translationすると、シート全体がすぐに英語だけになります。海外の同僚や顧客へそのまま送れます。
見出し、分類、製品、状態、担当者、備考はすべて英語になり、数字と金額は一切動きません。
を選び Originalすると、原文と元の書式がそのまま戻ります。中国語、配色、列幅、数式は翻訳前の姿です。中国語版を印刷するときは訳文を消さず、表示を切り替えるだけで足ります。
手順 9:訳文の色とスタイルを指定する
訳文と原文を見た目でもっと分けたいときは、 TRANSLATION STYLE で Translation color を Custom color。
開いたカラーピッカーは、色見本、RGB 数値、16進数の3通りに対応します(図の例は R:2、G:116、B:30)。フォント、サイズ、太字も個別に設定できます。会社のテンプレートに合わせるときや、言語版を見分けたいときに便利です。
一文で言うと:翻訳も対照も復元も、表1つで済みます。
3. できること
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| シート全体の翻訳 | Whole sheetを一度、Startを一度押すと、シート全体を一度に翻訳します(今回は57セル) |
| 対訳表示 | 中英を同じセルに書き、原文は上、訳文は下、行の高さは自動で伸びます |
| 数式と数値を保持 | 数字、金額、SUBTOTAL の数式は変わらず、合計は数式が計算を続けます |
| 固有名詞を保持 | iPhone 15、MacBook Air、A4、USB-C などの書き方は壊れません |
| 翻訳範囲 | This sheet(現在のシート)または All sheets(ブック全体)を選べます |
| 表示の切り替え | Translation / Bilingual / Original の3つの表示をワンクリックで切り替え |
| セルごとに照合 | 右側に各セルの Src / Tr が出て、一件ずつ確認できます |
| 訳文のスタイル | フォント、サイズ、太さ、色はすべて指定できます |
| 速度 | 今回は57セル。シート全体の翻訳は11.5秒です |
4. 向いている人
- 貿易と購買:購買明細、引合書、サプライヤー比較表の中英対照
- 財務と監査:数式のある帳票、費用一覧の対訳保管
- プロジェクト管理:進捗表、タスク一覧、リスク登録表の多言語版
- 越境EC:商品資料、在庫表、物流費用表の英語版
- 企業の管理部門:社内台帳、資産一覧の対訳版を作る
5. 使うときの注意
- 翻訳前にファイルをバックアップ:アドインは数式を変えませんが、先にコピーを保存してください
- 翻訳中は編集しない:書き戻し位置のずれを避ける
- 人名と状態の値を重点的に確認:右側の Src/Tr 一覧は一件ずつ目を通すのに向いています
- 複数シートは先に範囲を確認:複数シートのブックでは、SCOPE で All sheets を選びます
- 用語は Glossary で揃える:決まった訳は先に読み込めば、表全体で一致します
6. まとめ
表の翻訳で本当に難しいのは「中国語を英語に換える」ことではなく、換えたあと、その表をまだ使える:数式は計算でき、金額は合い、列幅と書式は崩れません。
向いている場合:
- 手元にあるのはネイティブのExcel(.xlsx)の表です。購買明細、見積書、在庫表、台帳など。
- 表の中に数式、数値、結合セルがあり、翻訳したあとも使い続けます。
- 必要なのが対訳での確認、または英語だけの版は欲しいが、表を作り直したくない場合です。
- 下書きを急ぐとき。今回の実例は 57セル、11.5秒。
要するに、ネイティブのExcelで、訳したあとも計算して送る表向けです。使う前にバックアップし、途中で表を変えず、人名と状態の値は人が一度見てください。